便潜血検査
検便と便潜血検査の違い
「検便」とは、排泄された便を使って行うさまざまな検査の総称です。検便では、消化管の異常を調べるために、便に血液が含まれていないか(便潜血検査)や、炎症性腸疾患で見られる特定のタンパク質(例:カルプロテクチン)の有無を調べたり、寄生虫や病原菌などの感染の有無を確認したりします。
便潜血検査とは?
便潜血検査は、肉眼では確認できない微量な血液が便の中に混ざっていないかを調べる検査です。
「潜血」とは、その名の通り“隠れた血液”を意味しており、通常の排便では気づかないレベルの出血も、この検査で検出できます。
この便潜血検査は、大腸がんの早期発見を目的としたスクリーニング検査として広く行われています。一般的な大腸がん検診で実施される「検便」は、この便潜血検査のことを指しています。
便潜血検査が陽性だった場合
検便の結果、便に血液が肉眼では見えなくても、検査で血液の存在が検出されれば「陽性」と判断されます。陽性となった場合、消化管のどこかで出血が起きている可能性があります。
便潜血が陽性となる原因には、大腸がんをはじめ、大きな大腸ポリープ、潰瘍性大腸炎、クローン病、痔など多くの病気が含まれます。
現在の便潜血検査では、検査を受けた方のおよそ5%が陽性になります。そのうち、大腸カメラなどの精密検査を行って実際に大腸がんと診断されるのは2〜3%程度とされており、全体としての発見率は約0.1%です。また、大腸ポリープが見つかる確率は約30〜50%程度とされています。便潜血検査を毎年継続して受けることで、頻度は少ないながらも大腸がんが発見されることで症状がでる前の早期に治療が開始されたり、ポリープが発見され内視鏡でポリープ切除を行うことで大腸がんの予防になり得ることから、便潜血検査によって大腸がんによる死亡リスクが60%前後減少すると言われております。よって、年に一度の検査が強く推奨されています。
便潜血検査が陰性だった場合
便潜血検査で「陰性」となった場合でも、大腸がんが完全に否定されるわけではありません。実際には、陰性の結果でも大腸がんと診断されるケースは一定数存在します。
便秘や下痢の継続、原因不明の体重減少、便が細くなる、腹痛などの症状が見られる場合は、たとえ検査結果が陰性であっても、精密な検査が必要となることがあります。
便潜血検査のがん発見率は、進行がんで60〜75%、早期がんでは30〜40%程度とされており、2日間の便を検査する「2日法」ではさらに10〜15%程度検出率が上昇すると報告されています。
つまり、進行がんの約10%、早期がんのおよそ半数は、便潜血検査では見逃される可能性があるということです。そうした背景から、症状のある方や不安のある方には、便潜血検査の結果にかかわらず、大腸カメラ査をお勧めすることが少なくありません。
便潜血検査が陽性のときに考えられる病気
便潜血検査で「陽性」と判定された場合、目に見えない血液が便の中に混ざっていることを意味し、消化管のどこかで出血が起きている可能性があります。具体的には、以下のような疾患が疑われます。
など
この中でも特に注意が必要なのが「大腸がん」です。大腸がんは、日本人のがんの中でも男女ともに発症数・死亡数ともに上位に入る重大な疾患です(2023年の臓器別がん死亡数の女性の1位、男性の2位)。早期発見・早期治療が非常に重要であり、その第一歩となるのが便潜血検査です。
陽性と判定された方は、たとえ自覚症状がなくても、必ず大腸カメラによる精密検査を受けましょう。
便潜血検査で陽性になったら
便潜血検査の結果が「陽性」となった場合は、大腸からの出血が疑われるため、大腸カメラをおすすめしています。
「血が混じっているのなら胃からの出血かもしれない。胃カメラも必要では?」という疑問を持たれる方もいらっしゃいます。
しかし、現在使われている便潜血検査(免疫法)は、ヒトのヘモグロビン(血液中のたんぱく質)に特異的に反応するよう設計されており、胃や小腸からの出血には反応しにくいという特徴があります。これは、胃酸や消化液によってヘモグロビンが分解されてしまい、検出されにくくなるためです。
そのため、便潜血陽性=大腸カメラによる精密検査が必要というわけです。大腸ポリープや大腸がんなど、大腸に異常がないかを詳しく調べるためにも、早めの検査をおすすめします。
消化器のお悩みは当院までご相談ください
当院では便潜血検査で陽性となった方の精密検査に力を入れています。便潜血陽性が判明した場合は、早めに二次検査(大腸カメラなど)を受けましょう。
また、便潜血検査が陰性であっても、腹痛や血便、下痢、便秘、お腹の張りなどの症状がある場合は、早めにご相談ください。消化器系の不調は、早期に対応することでより良い結果が得られることが多いため、気になる症状があればお気軽にご来院ください。