粉瘤(アテローム)について
粉瘤(ふんりゅう)は「アテローム」とも呼ばれる皮膚にできる良性の腫瘍です。何らかの原因で皮膚の下に袋状の構造(嚢胞)が形成され、その中に角質や皮脂がたまり、時間とともに少しずつ大きくなっていきます。一度できてしまうと自然に治ることはなく、治療には外科的な切除が必要です。
また、粉瘤に細菌が感染すると、赤く腫れて膿がたまり、痛みを伴う「炎症性粉瘤」になることがあります。良性の腫瘍であるため、必ずしもすぐに治療が必要というわけではありませんが、炎症が起きる前の早い段階で切除することで、化膿を防ぎ、体への負担も少なく済みます。
当院では、これまでの豊富な経験と技術に基づき、粉瘤の手術を行っています。無理に押しつぶすと感染や炎症のリスクが高まるため、自己処理は避けてください。当院では、できる限り傷跡を目立たせないように配慮した粉瘤の除去を行っております。
粉瘤の症状
初期症状は小さなしこりとして現れる
粉瘤の初期段階では、皮膚の表面に目立った変化は見られず、触れると小さなしこりのように感じる程度です。時間の経過とともに老廃物がたまり、少しずつ大きくなっていきます。ときに急激に大きくなることもありますが、自然に消えることはありません。
炎症を起こした粉瘤の症状
粉瘤の中央には、皮膚とつながる小さな穴があり、そこに黒い点(いわゆる「へそ」)が見えることがあります。ここから細菌が侵入すると感染が起き、粉瘤が赤く腫れて痛みを伴う「炎症性粉瘤」となります。
また、粉瘤の袋が皮膚の内部で破れ、老廃物が組織に漏れ出すことで炎症を引き起こすこともあります。無理に潰すと悪化し、化膿を招くことがあるため注意が必要です。
炎症性粉瘤では、赤み・腫れ・痛み・膿・独特な臭いなどの症状がみられます。膿がたまっている場合は、切開して排膿する処置が必要になることもあります。
間違われやすい他の疾患
粉瘤はニキビと間違えられやすく、誤って潰してしまい化膿させるケースも少なくありません。ただし、ニキビと異なり、粉瘤は自然に治ることがありません。
脂腺嚢腫は粉瘤に似たしこりを形成しますが、「へそ」がない点で区別できます。
石灰化上皮腫も皮膚の下に硬いしこりができる点では似ていますが、毛根由来の腫瘍で、ゴツゴツとした触感があります。
耳の近くにできた場合には、「耳前瘻孔」との鑑別も重要です。
自然治癒や予防ができない粉瘤
粉瘤は自然に治ることがなく、発症の明確な原因がわかっていないため、現時点では有効な予防法もありません。炎症を防ぐためには、できるだけ患部を触らないことが大切です。
炎症を起こした場合には抗生剤によって症状が一時的に改善することはありますが、粉瘤自体は切除しなければ治りません。
粉瘤の手術について
一般的な粉瘤手術

くりぬき法による粉瘤手術

粉瘤手術の流れ
1診察
まずは患部を診察し、できものが粉瘤か他の腫瘍かを判断します。粉瘤の大きさや位置を確認し、治療法の選択を行います。
2局所麻酔
粉瘤の周囲に印をつけ、局所麻酔を行います。できるだけ痛みを抑えた処置を心がけています。
3開孔(切開)
粉瘤の中心に4mmほどの小さな穴をメスで開けます。この穴から粉瘤の内容物を取り出します。
4内容物の除去
粉瘤内部の角質や皮脂などの内容物を、丁寧にすべて取り除きます。取り残しがあると再発の原因となるため、慎重に処置します。
5最終チェック
内容物の除去後、嚢胞(袋状の構造)が完全に取り切れているかを最終確認します。内部が空洞状になっているかどうかもチェックします。
6縫合
最後に傷口を縫合して処置を完了します。縫合部は約2〜3週間で自然に治癒していきます。
粉瘤手術の費用
粉瘤(アテローム)や脂肪腫の手術は、健康保険が適用されます。
治療費は、腫瘍の大きさ・部位・個数や、手術方法によって異なります。
また、病理検査やエコー(超音波)検査の実施により、費用が追加される場合があります。
服から露出している部分の粉瘤
粉瘤の直系の大きさ | 保険適応 3割負担の金額 |
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2㎝未満 | 5,310~9,900円 |
2~4㎝未満 | 11,340~16,020円 |
4㎝以上 | 13,410~18,090円 |
服から露出していない部分の粉瘤
粉瘤の直系の大きさ | 保険適応 3割負担の金額 |
---|---|
3㎝未満 | 4,170~8,860円 |
3~6㎝未満 | 10,020~14,710円 |
6㎝以上 | 12,810~17,500円 |